水原紫苑歌集『如何なる花束にも無き花を』

今月も好きな歌集がいろいろと、その中から一冊。八月十五日が発行日の歌集を

紫水晶を思わせる硬質の叙情。カバーを見つめていると天使の翼が!


水原紫苑歌集

『如何なる花束にも無き花を』

        本阿弥書店

 

軍服の父を知らざる幸ひをブローチとして心臓に刺す

 

心臓に刺すが、意志を感じさせる

 

玄牝やひかりの繭となりゆかむをみな超えたるこのうつそみは

ひかりの繭が好き

玄牝は「老子」道徳教第六章、にある言葉、大河の源にある谷神は尽きることなく、生命を生み出す、女性もまた、生命を生み出す。

河瀬直美さんの映画の題名でもありますね。「玄牝」2010年

 

若草の妹を焼きたる夕映かロゼシャンパンは天にこぼるる

夕映のは古代と現代を繋ぐ架け橋

 

風の骨あらはに見ゆるきさらぎを過ぎゆけるひとみな扇かも

釈超空、山中智恵子の扇がかさなる

 

雀らが野分の前に来たりける智恵を怖れて聴くモーツァルト

 

モーツァルトの音楽はそんな感じです。

 

※おことわり

水原紫苑さんは正字を使われているのですが、反映されておりません

 

 

f:id:meibin:20200824153016j:image